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低脂質血症とは?健診で指摘されたらどうすればいい?

  • 執筆者の写真: 貴介 浅川
    貴介 浅川
  • 4 時間前
  • 読了時間: 5分

健康診断の結果で「脂質が低い」と言われて、戸惑ったことはありませんか?コレステロールや中性脂肪というと「高いとよくない」という印象が強いですが、低すぎても体に悪影響を与える可能性があります。

今回の浅川クリニックのブログでは、低脂質血症の概要、健診後の対応の流れ、原因、そして体質や遺伝との関係について、医師の視点からわかりやすく解説します。



健診で低脂質血症があった人


低脂質血症とは?


血液中の脂質成分が正常値よりも低い状態を「低脂質血症」と呼びます。以下の値が基準より大きく下回っている場合、注意が必要です。


  • 総コレステロール

  • LDLコレステロール(悪玉)

  • HDLコレステロール(善玉)

  • 中性脂肪(トリグリセリド)


脂質は、細胞膜やホルモンの構成成分として重要な働きをしているため、著しく不足すると体に様々な不調が出ることがあります。




健診で「脂質が低い」と言われたら?流れとポイント


① 結果の確認

まずは、どの項目がどの程度低かったのか、数値と基準値をしっかり確認しましょう。

併せて体に何か不調がないかも再確認することと、最近体調に変化が出ていないかも確認しておきましょう。


② 医療機関での再検査

健診結果を持参の上医療機関を受診しましょう。その際には脂質値の異常値だけでなく、周辺の検査結果も判断に必要なことがあります。そのまま持っていくことと、可能であれば過去の健診結果や採血結果も持参できると参考になります。採血検査の際には一時的な体調や食事によって数値が変動することもあります。正確な診断のために、空腹時の再検査が推奨されます。




原因として考えられること


低脂質血症には、生活習慣から病気、そして体質や遺伝的な要因まで、幅広い原因が存在します。「体質的に脂質が低め」な方も多くおり、特に症状がなく健康状態も良好であれば、大きな問題にはなりません。ただし、急激な変化や症状がある場合は要注意です。


栄養不足・偏った食事

脂質を極端に制限するダイエットや、食欲不振、偏食などにより脂質の摂取量が少ないと、血液中の脂質も低くなります。


喫煙・運動不足などの不摂生

喫煙や運動不足が原因で、特にHDLコレステロールが低値になることがあります。逆を言うと、禁煙と規則的な運動習慣でHDLコレステロールを上昇させることができることがあります。


消化・吸収障害

消化器系の疾患によって、体内への脂質吸収が妨げられることがあります。

セリアック病・クローン病・慢性膵炎(膵臓からの消化酵素不足)


甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)

代謝が活発になり、脂質が急速に分解されます。特に健診での中性脂肪低値をきっかけに甲状腺機能異常が発見されるケースがあります。


重度の肝疾患

脂質合成能力の低下が生じます。数10年とお酒を多飲された方が、知らずに肝硬変・肝不全に至っているケースも中にはあります。


遺伝的要因(先天性脂質異常症)

まれではありますが、遺伝的な体質によって脂質が非常に低くなる人もいます。

多くが指定難病となっており、乳幼児期からの下痢症状や目の異常が出現しやすい病気です。きわめてまれな疾患で上に挙げたほかの原因がすべて否定された後に遺伝子検査などで判明する疾患となります。




低脂質血症を放っておくとどうなるの?


脂質は細胞・神経・ホルモンに関わる重要な栄養素です。長期的に不足すると、以下のような影響が出る可能性があります。

  • 慢性的な疲労や倦怠感

  • 免疫力の低下

  • 認知機能への影響(※明確な因果関係は未確定ですが報告あり)

  • 生理不順やホルモン異常(女性)

  • 成長障害(小児の場合)



コレステロール治療薬の載ったお薬手帳


ワンポイントアドバイス

薬によるコレステロール低下は必要な治療です


健康診断でコレステロールが低めと指摘された方の中には、スタチンなどの脂質低下薬を服用中の方もいらっしゃるかもしれません。この場合は、動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞といったリスクを減らすために、あえて治療としてコレステロールを下げていることがほとんどです。薬によってコレステロールが基準より低くなっていても、基本的には大きなリスクとはなりません。


◎ 過去の「低コレステロール=脳出血リスク」という研究について

以前、一部の研究で「低コレステロール血症は脳出血と関連する可能性がある」と報告されたことがありました。しかし、これは自然に低い場合や栄養状態の悪い高齢者における話が多く、スタチンなどの薬によって管理されている患者さんには当てはまらないと考えられています。現在のガイドラインでは、スタチンによってコレステロールが下がっていても、その恩恵(動脈硬化予防・心血管イベントの減少)の方が大きいとされており、治療を継続していただけます。





まとめ


脂質は「高すぎても」「低すぎても」問題になりうる栄養素です。体質や遺伝、病気、薬の影響など、背景にはさまざまな原因が隠れていることがあります。健診で「低い」と指摘された際は、自己判断で放置せず、専門的な評価を受けることをおすすめします。一方治療薬による低コレステロールは、意図的かつ安全な治療の一環です。必要以上に心配する必要はありません。不安なときは、主治医と相談して目標値を確認しましょう。


浅川クリニック 内科・世田谷

〒154-0017 東京都世田谷区世田谷1丁目3−8


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