【SAS検査】自宅でできる睡眠時無呼吸症候群の精密検査~在宅PSGと入院PSGの違いと適応を解説~
- 浅川貴介
- 9月5日
- 読了時間: 4分
更新日:10月10日
いびきが大きい、日中に強い眠気がある、寝ても疲れが取れない…そんな方に疑われるのが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。SASの診断には、まず「簡易検査(簡易PSG)」を行い、必要に応じてより詳細な「ポリソムノグラフィー(PSG)」検査へと進みます。
今回の浅川クリニックのブログは、ご自宅で行える在宅PSGと、医療機関で実施する入院PSGの違いや、それぞれの適応について、日本のガイドラインに基づいてわかりやすく解説します。

ポリソムノグラフィー(PSG)とは?
PSGは、睡眠中の呼吸・脳波・眼球運動・筋電図・心電図などを多面的に記録し、睡眠の質や無呼吸の有無・頻度を正確に評価するための検査です。
PSGには以下の2つの方法があります。
自宅でできる「在宅PSG」の特徴と適応
▶ 特徴
ご自宅で就寝中に行うため、リラックスした環境で検査可能
検査機器をお貸し出しし、患者さんご自身で装着(または当院で装着補助)
呼吸・いびき・血中酸素・心電図・体動などを記録(脳波は含まれません)
▶ 適応(日本呼吸器学会・睡眠学会ガイドラインより)
簡易検査で中等症~重症SASが疑われる場合
CPAP導入の判断目的(正確なAHIの確認)
高齢・育児・介護などで入院が困難な方
他の睡眠障害の可能性が低く、主にSASが疑われる場合
▶ メリット
入院不要、日常の睡眠環境で実施できる
精度が高く、CPAP導入判断にも対応
保険適用で費用は1〜1.2万円程度(3割負担)
医療機関で行う「入院PSG」の特徴と適応
▶ 特徴
医療機関内に1泊して行う精密検査
脳波や眼球運動を含むフルモニタリングで、睡眠構造や他の睡眠障害も評価可能
▶ 適応
簡易検査や在宅PSGで診断が不十分な場合
むずむず脚症候群、REM睡眠行動障害、ナルコレプシーなど他の睡眠障害を疑う場合
CPAP導入後の効果判定や再評価が必要な場合
睡眠の質や覚醒状態なども詳しく評価したいとき
▶ メリット
睡眠段階を含めた精密診断が可能
他の睡眠疾患との鑑別も可能
保険適用で費用は1.5〜2.5万円程度(3割負担)
在宅PSGと入院PSGの比較
項目 | 在宅PSG | 入院PSG |
実施場所 | 自宅 | 医療機関(入院) |
測定項目 | 呼吸、SpO₂、心電図、体動など | 脳波、眼球運動、筋電図も含む |
精度 | CPAP導入目的なら十分 | 最も正確で多角的な診断が可能 |
対応疾患 | SASが主対象 | SAS+他の睡眠障害も評価可能 |
費用(3割負担) | 約1〜1.2万円 | 約1.5〜2.5万円 |
当院での検査の流れ
初診・問診睡眠状況やいびき、眠気の有無を詳しくお伺いします。
簡易検査(簡易PSG)小型センサーをお貸しし、自宅で1~2晩計測します。
結果説明と治療方針のご相談必要に応じて在宅PSGや入院PSGをご案内いたします。
治療開始(CPAP、マウスピース、生活指導など)一人ひとりに合った治療方法をご提案します。
よくあるご質問
Q. PSG検査は痛みがありますか?
→ いいえ、センサーを装着するだけで痛みはありません。寝返りが打ちにくく感じる方もいらっしゃいますが、在宅検査であれば自然な環境で行えます。
Q. 保険は使えますか?
→ はい、睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状があれば、保険適用となります。

ワンポイントアドバイス
在宅PSGでは見逃しやすい「他の睡眠障害」にもご注意を
在宅PSGは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断には非常に有用な検査ですが、脳波を記録しないため、以下のような他の睡眠障害は評価が難しい場合があります。
在宅PSGで見落とされることがある代表的な疾患
REM睡眠行動障害(RBD)
夢の中で叫んだり暴れたりする症状で、将来パーキンソン病など神経疾患につながることもあります。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
寝る前や夜間に足がムズムズして眠れない、周期性四肢運動障害を伴うことも。
中枢性睡眠時無呼吸症候群
脳からの呼吸指令が止まるタイプの無呼吸で、在宅検査では呼吸努力の有無の判断が困難。
ナルコレプシーや睡眠関連てんかん
極度の眠気や睡眠中のけいれんがある方には、脳波を含む検査が必要です。
これらの病気を正確に診断するには、脳波や筋電図を含めた入院PSGが適しているとされています。
どちらが自分に合っているか迷ったら…
症状や生活背景によって、最適な検査方法は異なります。当院では医師がしっかりと問診を行い、在宅PSGで十分か、入院検査が望ましいかを丁寧に判断いたします。
「いびきだけでなく、寝言や夜間の異常行動も気になる」「眠気だけでなく、足の違和感やけいれんがある」そんな方は、遠慮なくご相談ください。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群の検査は、在宅でも精度高く実施できる時代になっています。ただし、症状や背景により「在宅PSG」と「入院PSG」には向き・不向きがあります。
浅川クリニック世田谷では、患者さんの生活スタイルやリスクに合わせた柔軟な検査と治療のご提案を行っています。いびきや眠気でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
浅川クリニック 内科・世田谷
〒154-0017 東京都世田谷区世田谷1丁目3−8

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