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健康診断 人間ドックとの違い

  • 執筆者の写真: 浅川貴介 |  浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士
    浅川貴介 | 浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士
  • 11月28日
  • 読了時間: 7分

1)人間ドックと健康診断の違い

2)健康診断の特徴、メリットとデメリット

3)人間ドックの特徴、メリットとデメリット

4)上手な受診方法など

5)どちらを受診するべき?


1年に1回、健康診断の時期になると、人間ドックという言葉を聞くことはありませんか?

なにやら大変そう、値段が高そう、でも色々なことが分かりそうなど、漠然としたイメージをもたれる方も多いのではないでしょうか。今回の浅川クリニックのブログは健康診断と人間ドックの違いについて解説します。



健康診断を受診した女性


1)人間ドックと健康診断の違い


健康診断

健康診断は、健康状態を確認するための基本的な検査で、特に病気の早期発見や健康管理が目的です。年齢や性別に応じた一般的な身体検査や血液検査が含まれます。


会社にお勤めの方たちが会社で受ける健康診断は、法律(労働安全衛生法)によって会社側に従業員の安全を管理するための実施義務があります。法律上やるべき項目は必要最低限となっています。法律で定められている検査項目以外は、会社が福利厚生として負担している場合や、自己負担となります。

その他、40歳から74歳までの方を対象とした特定健診(通称メタボ健診)というものもあります。こちらは生活習慣病の原因になる項目を重点的に確認する健診となります。


がん検診というものもあります。ちなみに健診と検診は『ケン』の字が異なります。健康を診断する健診と、特定の病気を検査して見つける検診の違いがあります。がん検診では肺がん・乳がん・前立腺がんなど特定の病気を見つけるための検診になります。

健康診断・がん検診ともに自治体や会社などの補助により無料もしくは一部自己負担金で低額で受診することができます。健康診断は多くの内科を標榜する医療機関で受診することができ、概ね1時間ほどで一通りの検査が終了します。

 

人間ドック

人間ドックは健康診断よりも詳細な検査内容で、特に特定の病気の早期発見や予防に重点を置いた検査が行われます。健康診断とは違い法的な義務はなく、受診するかは任意となります。


ちなみに人間ドックの『ドック』は港にある船渠(船を建築修繕するための建物 英語でDock)を意味しています。海から帰ってきた船は定期的にドックで総合的に保守点検を受けています。その人間と考えてよいかと思います。


実施される医療機関によって取り扱っている検査内容も様々です。一般的な健診では見ることのない、脳ドック(頭部MRIなどの画像検査)やがんを早期発見するための腹部画像検査・血液検査で腫瘍マーカー測定、女性特有の疾患の検査などを行なうことができます。

人間ドックは任意のものになり、負担額は高額となります。半日の検査で4-5万円ほど、1日がかりですと8-10万円ほどすることが一般的です。自由診療のため医療機関によって値段に幅があります。

 


 

2)健康診断のメリットとデメリット


メリット


健康状態の把握

一般的な健康状態を把握し、病気の早期発見や健康管理に役立ちます。特に定期的に受けることで、健康維持の基準となる基本的な検査項目や、その変化を確認できます。


低コストと普及性

会社に義務付けられている健康診断の費用は会社が負担するため、自己負担はありません。自治体から発行される健診票をお持ちの場合も、自治体の指定医療機関で健康診断を受ける場合は一部自己負担金のみの低額で実施が可能です。また、健康診断は多くの内科医療機関で実施が可能です。


デメリット


精度の限界

一般的な健康診断では、詳細な診断や特定の疾患の早期発見には限界があります。検査項目が少なく、画像検査もレントゲン検査など限られています。深刻な病気や特定のリスクを持つ人にとって、適切な情報が得られない場合があります。

 



3)人間ドックのメリットとデメリット


メリット


詳細な健康評価

特定の病気や健康リスクの早期発見や評価が可能です。特に家族歴やライフスタイルに応じて検査項目を選択することで、より適切な健康管理が行えます。


専門的なアドバイスとフォローアップ

詳細な検査結果を基に、医師からのアドバイスや必要な治療の紹介が受けられます。


デメリット


費用と時間の負担

自由診療であり、健康診断よりも費用負担が高額であり、1日がかりなど時間もかかることがあります。特に専門的な検査を含む場合は、それに伴う時間的金銭的負担が大きくなります。


過度な精密検査のリスク

不必要な精密検査を受けることで、過剰診断や不安を引き起こす可能性があります。また、健康リスクを過大評価することもあります。

 


健診医療機関


4)上手な受診方法は

 

まずは、1年に一回、かならず人健康診断か間ドックを受けることが大切です。

体の状態は刻一刻と変化していきます。1回だけの健診結果ではわからない情報も、経年的な変化を見ることでわかることがあります。例えば、腎臓の血液検査数値が上昇している場合など、複数年にわたる検査値を参照することで実際に腎臓の機能に影響が出てきているのかを推測できることがあります。体重や血圧なども経年的な変化がどうなっているかを確認することが健康維持に重要です。1年に1回健康状態を確認することで、健康への意識を高めることもできます。


健診や人間ドックを受けたままで終わらせないことも大切です。健診の結果に併せて記載されている事項をしっかり守っていきましょう。例えば数か月後再検査などの指示がある場合には、医療機関での再検査のための受診が望まれます。中には一時的な異常所見で問題のないケースもありますが、重篤な病気が見つかることや、悪化していることもあります。健診項目での数値上異常の多くは自覚症状を伴わないものです。現在体調が悪くないからと言って後回しにしないことが大切です。

 



5)どちらを受診するべき?


その上で、健康診断を受けるべきか、人間ドックを選ぶべきかの参考となることをお伝えします。

先に述べたように健康診断の項目だけでは詳細な生活習慣病の検査やがんの早期発見、脳の問題などを十分に評価することは困難です。


自身のリスクファクターによっては比較的早い年代から人間ドックで病気の兆候がないかを確認することが大切です。例えばがん家系であるなど家族歴が濃厚な場合には、人間ドックでがんに特化した項目を確認してみてもよいかと思います。ただし、胃痛など症状がある際には自由診療の人間ドックではなく保険診療で医療機関での検査ができます。また、腫瘍マーカーの測定に関しても人間ドックで行うことができます。こちらに関しては、私個人の認識としまして最初に行う検査としては、必要性があまり高くないと感じています。確かに腫瘍マーカーで異常高値を示している場合に追加の画像精査でがんが見つかるケースもあります。ただし、腫瘍マーカーは実際にがんではなくても体の状態や生活習慣によって高値となることがあります。軽度高値の場合に不要な不安を感じてしまうこともあります。がんの検査をするならば画像検査が優先されるべきと考えています。


脳ドックに関しても、ご家族にくも膜下出血をされた方がいる場合や、車両運転業務をされていている方は一度受けてみてもよいかもしれません。くも膜下出血の原因として脳動脈瘤という血管の瘤が画像検査でみつかることがあります。

 



まとめ


知らない間に病気が進行していることは多々あります。健康診断や人間ドックを経時的に受けることは健康増進につながるだけでなく、病気の早期発見にも重要です。

現在日本では個々のニーズに合わせて様々な種類の人間ドックでの検査が実施されています。

まずは毎年の健康診断をしっかり受診し、その上でより精度を高めて健康を維持するためには人間ドックを活用してみてもよいかと思います。



浅川クリニック 内科・世田谷

〒154-0017 東京都世田谷区世田谷1丁目3−8


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