夜中にいびきが止まる 睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
大柄なお父さんの、いびきが突然止まっていることに気づいたことはありませんか?睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome、SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に停止する状態が繰り返し起こる病気です。この症状は、十分な休息を妨げ、日中の疲労感や集中力の低下を引き起こすだけでなく、長期的には心血管疾患などの深刻な健康問題に繋がる可能性があります。今回の浅川クリニックのブログでは、睡眠時無呼吸症候群の原因、影響、治療法について詳しく説明します。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群には主に二つのタイプがあります。一つは「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」で、これは咽頭部の筋肉が弛緩し気道が一時的に閉塞することで起こります。もう一つは「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」で、こちらは脳が適切な呼吸を維持する信号を送らないことが原因です。実際にはOSAの患者さんが大半を占めております。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
肥満
過体重は首周りの脂肪が増え、これが気道を狭める原因となることが多いです。
解剖学的な問題
扁桃腺の肥大、短いあご、狭い喉など、気道の構造的な問題が影響を与えることがあります。
筋肉の弛緩
睡眠中に喉の筋肉が過度にリラックスすると、気道が塞がれやすくなります。アルコールや睡眠薬の使用がこれを促進することがあります。
加齢
年齢とともに気道を支える筋肉の強度が低下するため、OSAのリスクが高まります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
心臓疾患
心不全などの心臓疾患は、呼吸パターンに影響を与えることがあります。
脳の障害
脳幹の障害や脳卒中後など、中枢神経系の問題が原因で起こることがあります。
高地での生活
高地では酸素レベルが低下し、これが中枢の呼吸調節機能に影響を与えることがあります。
オピオイドの使用
オピオイド類の鎮痛剤は、呼吸を制御する脳の部分に影響を与えることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群の症状は多岐にわたり、その影響は夜間だけでなく日中の活動にも及びます。
夜間の症状
いびき
非常に大きくて断続的ないびきが特徴です。いびきは睡眠時無呼吸症候群の典型的な兆候であり、特に気道が一時的に塞がるときに起こります。
呼吸の停止
睡眠中に呼吸が短時間停止する現象が観察されることがあります。これは通常、同じベッドで寝ているパートナーによって指摘されることが多いです。
頻繁な目覚め
気道が塞がれると自然と目が覚めるため、夜間に何度も目を覚ますことがあります。これにより、睡眠の質が低下します。
ガスピングや窒息
睡眠中に突然ガスピング(息をむせ返ること)や窒息するような感覚に襲われることがあります。
夜間のトイレ利用の増加
夜間頻尿も睡眠時無呼吸症候群の一症状であることがあります。
日中の症状
過度の日中の眠気
不完全な夜間の睡眠により、日中に異常なほどの眠気を感じることがあります。
集中力の低下
睡眠不足は記憶力や集中力の低下を引き起こします。
朝の頭痛
起床時に頭痛を感じることがあります。これは夜間の低酸素状態と関連があると考えられています。
気分の変動
イライラ感や抑うつ症状が現れることがあります。
性能力の低下
性欲の減退や性機能障害の原因となることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の健康への影響
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)は、単に夜間の睡眠を妨げるだけでなく、多くの健康上のリスクをもたらす可能性があります。
心血管疾患
睡眠時無呼吸は高血圧のリスクを高め、心臓病、心筋梗塞、不整脈、心不全などの心血管系の疾患を引き起こす可能性があります。夜間の繰り返しの低酸素状態は心臓に負担をかけ、長期的な健康問題へと繋がります。睡眠時無呼吸症候群を適切に治療せずに8年間放置した場合、死亡率が約37%になるとの指摘もあります。
脳卒中
睡眠時無呼吸は脳卒中のリスクも増大させることが知られています。これは、呼吸障害による酸素供給の不足や、高血圧の結果として起こります。
糖尿病
睡眠時無呼吸はインスリン抵抗性を高めることが示されており、これが2型糖尿病のリスクを増加させる可能性があります。不十分な睡眠はホルモンバランスを乱し、血糖管理を困難にします。
精神的健康問題
睡眠不足はストレス、不安、うつ病などの精神的健康問題を引き起こすことがあります。睡眠時無呼吸患者は、日中の過度の眠気や気分の落ち込みを経験することが多いです。
交通事故リスクの増加
昼間の過度の眠気は、特に運転中などの集中力が求められる活動において事故を引き起こすリスクを高めます。これは、反応時間の遅延や注意力の散漫が原因です。
生活の質の低下
睡眠時無呼吸は全般的な生活の質を著しく低下させる可能性があります。疲労感、集中力の低下、日中のパフォーマンスの低下など、日常生活に悪影響を及ぼします。
睡眠時無呼吸症候群の検査・診断
問診から症状、医療歴、家族歴、生活習慣について確認します。
体重身長や肥満度、咽頭の診察や首周りの計測を行います。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、自宅で行う簡易的な睡眠検査を行います。
簡易検査(簡易終夜ポリソムノグラフィー検査・簡易PSG検査)
専用の検査機器を当院からお貸しして、患者様がご自宅で行う検査です。鼻と口に呼吸センサーを、指に血中酸素濃度を計測するセンサーをつけて普段通りに自宅で眠ることになります。後日検査機器のデータを解析して、10秒以上の無呼吸や低呼吸が1時間あたりに何度起きていて、その際の血中酸素濃度低下の有無を調べることで睡眠時無呼吸症候群の症状の程度を判断して診断します。
精密検査(終夜ポリソムノグラフィー検査)
睡眠時無呼吸の診断には、通常、1時間あたりの呼吸障害指数(Apnea-Hypopnea Index, AHI)が用いられます。一般的にAHI40以上でCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)という機器を使用した治療を開始します。AHI20以上でさらなる精密検査(終夜ポリ蘇武のグラフィー検査)を病院などで行っていただき、治療選択肢を考えていくことになります。
睡眠時無呼吸症候群の治療
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:経鼻的持続陽圧呼吸療法)
CPAPは、睡眠中に一定の気流を提供するマシンを使用し、気道が閉塞するのを防ぎます。中等症から重症の方に使用され、日本国内や欧米で主流の治療法です。鼻に装着したマスクから送られる空気が気道の閉塞を防ぎ、スムーズな呼吸ができるようにします。良好な睡眠をとれるようになるため、日中の眠気も解消できます。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)治療の標準的な方法です。
利点
いびきの減少、睡眠の質の向上、日中の眠気の軽減に効果的です。
課題
マスクの不快感や機械の音により、CPAPを毎晩使用することに抵抗を感じる場合があります。
口腔内装置(マウスピース)
軽度から中等度のOSAに対して、下顎を前方に保持することで気道を開放するマウスピースが用いられます。
利点
携帯が容易で、使用が比較的簡単です。また、CPAPよりも患者様の受容性が高いことがあります。
課題
効果はCPAPほど高くない可能性があり、長期間の使用による顎関節への影響が懸念されます。
手術
睡眠時無呼吸症候群の原因に応じて、扁桃腺の除去、顎の位置の修正、喉頭の手術などが行われることがあります。
利点
構造的な問題を修正することで、永続的な解決が期待できる場合があります。
課題
手術にはリスクが伴い、すべての患者に適した選択ではない可能性があります。
生活習慣の改善
体重管理
過体重は睡眠時無呼吸のリスクを増加させます。体重を減らすことで症状が改善されることがあります。
睡眠姿勢の改善
背中を下にして寝るのを避け、横向きに寝ることで、気道が閉塞しにくくなります。
アルコールと睡眠薬の再検討
睡眠前のアルコール摂取や睡眠薬は気道筋肉をリラックスさせ、無呼吸を悪化させる可能性があります。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を受けることで症状を大幅に改善し、関連する健康リスクを低減することが可能です。浅川クリニックでは、専門的な診断と個別の治療計画を提供し、患者様一人一人の健康状態に合わせたサポートを行っています。睡眠時無呼吸に関するお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
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