ALTが30を超えたら受診が必要?奈良宣言と脂肪肝の最新知識をわかりやすく解説

健康診断で、
「ALTが高いですね」「肝機能異常があります」「脂肪肝かもしれません」
と言われたことはありませんか?
でも、AST、ALT、γ-GTPと書かれていても、何のことかよくわからない方も多いと思います。
特にALTは、肝臓の状態を見るうえでとても大切な数値です。
日本肝臓学会の「奈良宣言2023」では、ALTが30を超えていた場合、まずはかかりつけ医などを受診することが勧められています。
「30を少し超えただけで病院に行くの?」「自覚症状はないけど大丈夫じゃないの?」「脂肪肝ってそんなに悪いの?」
と思う方もいるかもしれません。
今回の浅川クリニックのブログは、ALTとは何か、なぜ30を超えたら受診が勧められるのか、脂肪肝の最新の考え方、そして最近広がってきた治療の選択肢について、わかりやすく解説します。

まず、昔のGOT/GPTと今のAST/ALTの関係
昔の健康診断では、肝機能の項目に「GOT」「GPT」と書かれていることがよくありました。
最近は、それが「AST」「ALT」と書かれていることが多くなっています。
対応は次の通りです。
GOT = AST
GPT = ALT
つまり、名前が変わっただけで、まったく別の検査になったわけではありません。
昔のGPTが、今でいうALTです。
名前が変わった理由は、世界的に検査名を統一し、酵素の働きをより正確に表す呼び方に整理されたためです。
患者さんとしては、まず、
「GPTの今の名前がALT」
と覚えておけば大丈夫です。
ALTとは何ですか?
ALTは、主に肝臓の細胞の中にある酵素です。
肝臓の細胞が傷つくと、ALTが血液中に漏れ出します。
つまりALTが高いということは、ざっくり言うと、
「肝臓が少し傷んでいるかもしれないサイン」
です。
もちろん、ALTが少し高いだけで、すぐに大きな病気という意味ではありません。
しかし、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。
かなり悪くなるまで、痛みやだるさなどの自覚症状が出にくい臓器です。
そのため、健康診断でALTが高いと言われた時点で、一度きちんと原因を確認しておくことが大切です。
奈良宣言とは?
奈良宣言2023は、日本肝臓学会が出した肝臓病の早期発見を目的としたメッセージです。
内容をかなり簡単に言うと、
「ALTが30を超えていたら、肝臓の病気が隠れていないか確認しましょう」
というものです。
これまでは、健康診断でALTが少し高くても、
「様子を見ましょう」「お酒を控えましょう」「脂肪肝ですね」
で終わってしまうことも少なくありませんでした。
しかし、ALTが30を超えている人の中には、脂肪肝、脂肪肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、薬やサプリによる肝障害などが隠れていることがあります。
奈良宣言では、ALTが30を超えた場合、まずかかりつけ医を受診し、必要に応じて採血や腹部超音波検査などで原因を確認する流れが示されています。
ALT 30超え=すぐに危険、ではありません
ここは誤解しないでください。
ALTが31や35だったからといって、すぐに命に関わるという意味ではありません。
ただし、
「正常範囲内だから大丈夫」と流してしまうのではなく、早めに原因を見ておきましょう
という考え方です。
肝臓の病気は、症状が出にくいまま進むことがあります。
特に脂肪肝は、初期にはほとんど症状がありません。
しかし、脂肪肝の一部は、肝臓に炎症を起こし、少しずつ肝臓が硬くなることがあります。
肝臓が硬くなることを、医学的には「線維化」といいます。
この線維化が進むと、将来的に肝硬変や肝がんにつながることがあります。
だからこそ、ALTが30を超えた時点で一度確認する意味があります。
病院に行くと、実際に何をされるの?
「受診してください」と言われると、不安になる方も多いと思います。
「いきなり大きな検査をされるの?」「入院になるの?」「肝臓がかなり悪いの?」
と心配になるかもしれません。
しかし、実際にはいきなり怖いことをするわけではありません。
まず行うのは、問診と血液検査の確認です。
たとえば、
お酒をどのくらい飲むか、体重が増えていないか、薬やサプリを飲んでいないか、糖尿病・脂質異常症・高血圧がないか、過去に肝炎を指摘されたことがないか、家族に肝臓病の人がいないか、などを確認します。
そのうえで、必要に応じて追加の血液検査を行います。
見る項目は、AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン、血小板、血糖、HbA1c、中性脂肪、コレステロール、B型肝炎、C型肝炎などです。
脂肪肝が疑われる場合は、腹部超音波検査をおすすめすることもあります。
腹部超音波検査は、お腹にゼリーを塗って機械を当てる検査です。痛みはありません。
肝臓に脂肪がたまっていないか、胆石がないか、肝臓の形に異常がないかなどを確認します。
つまり、ALTが高いと言われたときの受診は、
「いきなり大ごと」ではなく、「原因を確認するための入口」
と考えてください。
もし本当にやばかったらどうなるの?
ALTが少し高いだけで、すぐに入院や大きな治療になることは多くありません。
多くの場合は、
「脂肪肝かもしれません」「お酒を少し減らしましょう」「体重を少し落としましょう」「数か月後に再検査しましょう」
という流れになります。
ただし、次のような場合は、より詳しい検査が必要になります。
ALTやASTがかなり高い場合、黄疸がある場合、ビリルビンが高い場合、血小板が少ない場合、肝炎ウイルスが陽性の場合、腹部超音波で異常を指摘された場合、肝硬変が疑われる場合、薬剤性肝障害や自己免疫性肝炎が疑われる場合などです。
こうした場合は、消化器内科や肝臓専門医に紹介することがあります。
大切なのは、
「やばい病気を見つけるために受診する」というより、「やばくなる前に見つけるために受診する」
ということです。
脂肪肝って悪いものなの?
脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまりすぎた状態です。
イメージとしては、フォアグラに近い状態です。
昔は、
「脂肪肝くらいならよくある」「太っている人によくあるだけ」「お酒を飲む人の問題」
と思われがちでした。
しかし、最近は脂肪肝の見方が大きく変わってきています。
脂肪肝の中には、ただ脂肪がたまっているだけではなく、肝臓に炎症が起きるタイプがあります。
以前はこれをNASH、つまり非アルコール性脂肪肝炎と呼んでいました。
最近は病名の考え方が変わり、MASH、代謝機能障害関連脂肪肝炎という呼び方が使われるようになっています。
難しい言葉ですが、患者さん向けに言うと、
「脂肪肝に炎症が加わり、肝臓が傷みやすくなっている状態」
です。
脂肪肝すべてがMASHになるわけではありません。
しかし、MASHになると、肝臓の炎症が続き、肝臓が少しずつ硬くなることがあります。
この線維化が進むと、将来的に肝硬変や肝がんにつながることがあります。
つまり脂肪肝は、
「今すぐ危険とは限らないけれど、放置してよいとも言えない状態」
です。
NAFLD/NASHからMASLD/MASHへ
(※ここは読み飛ばしOK)
脂肪肝の世界では、最近、病名の考え方が変わってきています。
以前は、NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患NASH:非アルコール性脂肪肝炎
という言葉がよく使われていました。
しかし、2023年に国際的な合意があり、脂肪性肝疾患の名称は新しく整理されました。
日本でも、日本消化器病学会と日本肝臓学会が新しい日本語病名を公表しています。
MASLDは、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患。MASHは、代謝機能障害関連脂肪肝炎。
かなり難しい名前ですが、簡単に言うと、
「脂肪肝は、お酒だけの問題ではなく、体重・血糖・中性脂肪・血圧など、代謝の乱れと深く関係している」という考え方です。
つまり、脂肪肝は肝臓だけの病気ではありません。
全身の生活習慣病のサインとして見る必要があります。
お酒を一杯も飲んでいなければ大丈夫?
お酒を飲まないから肝臓は大丈夫、とは言い切れません。
脂肪肝は、お酒を飲む人だけの病気ではありません。
お酒をほとんど飲まない人でも、体重増加、内臓脂肪、糖尿病、血糖値高め、中性脂肪高め、運動不足、甘い飲み物、夜遅い食事、筋肉量の低下などで脂肪肝になることがあります。
特に日本人では、体重がそれほど多くなくても、内臓脂肪がつきやすい人がいます。
そのため、
「太っていないから大丈夫」「お酒を飲まないから大丈夫」
とは言い切れません。
ALTが高い場合は、体型や飲酒量だけで判断せず、一度確認したほうが安心です。

自覚症状がないけど、それでも受診したほうがいいの?
はい。
肝臓の病気は、症状がないことがとても多いです。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。
少し脂肪がたまっている、少し炎症がある、少し硬くなっている、という段階では、自覚症状がほとんどありません。
「痛くないから大丈夫」「だるくないから大丈夫」「食欲があるから大丈夫」
とは言い切れないのが肝臓です。
逆に言えば、健康診断でALTが高いと言われた段階は、早めに気づけるチャンスでもあります。
症状が出てから慌てるよりも、症状がないうちに確認したほうが、生活習慣の改善だけで済む可能性も高くなります。
脂肪肝の治療は、昔より幅が広がっています
脂肪肝というと、以前は、
「体重を落としましょう」「お酒を控えましょう」「運動しましょう」
と言われて終わることが多い病気でした。
もちろん、今でも食事・運動・体重管理は脂肪肝治療の基本です。
しかし最近は、脂肪肝の治療の考え方が大きく変わってきています。
特に、肥満や糖尿病を伴う脂肪肝では、糖尿病や肥満症の治療薬が肝臓にも良い影響を与える可能性がわかってきました。
なかでも注目されているのが、GLP-1受容体作動薬と呼ばれる注射薬です。
これはもともと、2型糖尿病や肥満症の治療に使われてきた薬です。食欲を抑えたり、体重を減らしたり、血糖を改善したりする作用があります。
そして最近では、脂肪肝炎、つまりMASHに対する治療薬としても使われるようになってきました。
日本でも2026年6月、セマグルチド2.4mg週1回皮下注射製剤であるウゴービが、肝硬変を伴わないMASHに対して承認されました。ただし、対象は中等度または高度の線維化を有する場合に限られます。
つまり、脂肪肝の治療は、
「生活習慣を変えるしかない時代」から、「状態によっては薬も含めて治療を考える時代」
に変わりつつあります。
ただし、ここで大切なのは、誰でもすぐに注射薬の対象になるわけではないということです。
単なる脂肪肝、軽いALT高値、少し体重が増えた程度で、いきなり注射薬を使うという話ではありません。
まずは、脂肪肝の程度、肝臓の線維化、体重、血糖、中性脂肪、血圧、睡眠時無呼吸症候群の有無などを確認し、その人に合った治療を考えることが大切です。
脂肪肝と睡眠時無呼吸症候群
脂肪肝の方では、睡眠時無呼吸症候群を合併していることがあります。
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。
いびきが大きい、寝ても疲れが取れない、日中眠い、朝起きたときに頭が重い、血圧が高い、体重が増えてきた、という方では注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群では、寝ている間に体が低酸素状態を繰り返します。
この低酸素状態が、インスリン抵抗性、脂質代謝の乱れ、酸化ストレス、炎症などに関わり、脂肪肝の悪化に関係する可能性が指摘されています。
つまり、脂肪肝は肝臓だけの問題ではありません。
体重、血糖、中性脂肪、血圧、睡眠、いびき、日中の眠気など、全身の代謝と深く関係しています。
脂肪肝を指摘された方で、
いびきが大きい、寝ているときに呼吸が止まると言われた、朝起きても疲れが取れない、日中眠い、高血圧がある、肥満がある、首まわりが太い、という場合は、睡眠時無呼吸症候群も一緒に確認したほうがよいことがあります。
脂肪肝は「肝臓だけの病気」ではありません
脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまる病気です。
しかし実際には、肝臓だけで完結する病気ではありません。
背景には、肥満、内臓脂肪、糖尿病、血糖値高め、中性脂肪高め、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、運動不足、飲酒、筋肉量の低下などが関係していることがあります。
つまり脂肪肝は、
「肝臓に出てきた生活習慣病のサイン」
とも言えます。
健康診断でALTが高い、脂肪肝と言われた、という段階で一度確認しておくと、肝臓だけでなく、糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群などを早めに見つけるきっかけにもなります。
注射薬があるなら、生活習慣は変えなくていい?
これは違います。
新しい治療薬が出てきたとしても、脂肪肝治療の基本は今でも生活習慣の改善です。
薬はあくまで、必要な人に、適切な条件で使う治療の一つです。
食事、運動、体重管理、お酒、睡眠を整えることは、どの段階の脂肪肝でも大切です。
むしろ、薬を使う場合でも、生活習慣を一緒に整えることで効果が出やすくなります。
脂肪肝は、早い段階で気づいて対策すれば、改善が期待できる病気です。
「症状がないから大丈夫」「脂肪肝くらいよくある」「お酒を飲まないから関係ない」
と思って放置せず、ALTが30を超えていたら、一度ご相談ください。
ALTが30を超えた方へ
ALTが30を超えたからといって、すぐに怖がる必要はありません。
しかし、何もせず放置してよいサインでもありません。
特に、健康診断で毎年ALTが高い方、脂肪肝と言われたことがある方、体重が増えてきた方、中性脂肪や血糖値も高い方、お酒を飲む習慣がある方、家族に肝臓病がある方、薬やサプリを長く飲んでいる方は、一度ご相談ください。
浅川クリニック世田谷では、健康診断でALT高値や肝機能異常を指摘された方のご相談を受け付けています。
必要に応じて血液検査を追加し、腹部超音波検査や消化器内科での詳しい検査が必要な場合は、適切な医療機関へご紹介します。
肝臓は、悪くなるまで黙っている臓器です。
だからこそ、健康診断の小さな異常を見逃さないことが大切です。
まとめ
ALTは、肝臓の傷みを反映しやすい大切な数値です。
昔のGPTが、今でいうALTです。
日本肝臓学会の奈良宣言2023では、ALTが30を超えていた場合、まずかかりつけ医などを受診することが勧められています。
ALT 30超えは、すぐに危険という意味ではありません。
しかし、脂肪肝、脂肪肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール、薬剤、生活習慣病などが隠れていないかを確認する大切なきっかけです。
特に脂肪肝は、昔のように「よくあるから大丈夫」と軽く見る時代ではなくなっています。
NASH、現在のMASHのように、脂肪肝に炎症や線維化が加わるタイプでは、将来的に肝硬変や肝がんにつながることがあります。
一方で、最近は肥満症や糖尿病の治療薬、GLP-1受容体作動薬なども含め、脂肪肝治療の選択肢は広がってきています。
また、脂肪肝は睡眠時無呼吸症候群、高血圧、糖尿病、脂質異常症などとも関係することがあります。
肝臓は沈黙の臓器です。
症状がないうちに、健康診断の小さな異常を見逃さないことが、将来の肝硬変や肝がんを防ぐ第一歩になります。
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