スーパー銭湯のニュースで聞く「レジオネラ菌」とは?
- 浅川貴介 | 浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士

- 4 時間前
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スーパー銭湯や温浴施設に関連して「レジオネラ菌」という言葉をニュースで目にすることがあります。外来でも「お風呂に入って大丈夫でしょうか」「家の浴槽も危ないですか」と、不安そうに質問されることがあります。
結論からお伝えすると、正しく管理された施設や、通常の家庭のお風呂で過度に心配する必要はありません。大切なのは、レジオネラ菌がどのような菌なのか、そしてどのように感染するのかを正しく知ることです。

レジオネラ菌とはどんな菌なのか
レジオネラ菌は、もともと自然界に広く存在する細菌です。川や湖、土壌などにも普通に存在しており、決して人工的に作られた危険な菌ではありません。
ただし、ぬるめの温水が長時間たまり、水の流れが悪く、消毒や清掃が十分に行われていない環境では増殖しやすいという特徴があります。そのため、循環式浴槽やジャグジー、シャワー設備、空調設備、加湿器などが問題として取り上げられることがあります。
「在郷軍人病」と呼ばれるようになった歴史
レジオネラ菌という名前には、はっきりとした歴史的背景があります。
1976年、アメリカで在郷軍人(退役軍人)の大会が開催された際、参加者の間で原因不明の重い肺炎が相次いで発生しました。高熱や呼吸困難を呈し、亡くなる方も出たため、当時は大きな社会問題となりました。
調査の結果、会場となったホテルの空調設備に使用されていた水が汚染され、そこから発生した細かい水しぶきを参加者が吸い込んだことが原因であると判明します。このとき新たに発見された菌が、在郷軍人を意味する「Legion」にちなんでレジオネラ菌と名付けられました。
この経緯から、レジオネラ菌による重症肺炎は現在でも「在郷軍人病(レジオネラ肺炎)」と呼ばれています。
どうやって感染するのか
レジオネラ菌について、最も誤解されやすい点が感染経路です。この菌は、人から人へうつる病気ではありません。
感染は、菌を含んだ細かい水しぶきを吸い込むことで起こります。シャワーや気泡浴、空調設備などで発生する霧状の水分を、呼吸と一緒に体内に取り込んでしまうことが原因です。
そのため、湯船に浸かっただけで感染したり、お湯を飲んだから感染するというものではありません。
どんな症状が出るのか
感染した場合、症状には幅があります。重症化すると、高熱や咳、息苦しさ、強い倦怠感を伴う肺炎を起こします。人によっては下痢や意識障害がみられることもあり、高齢の方や基礎疾患のある方、喫煙習慣のある方では重症化しやすいことが知られています。
一方で、発熱や頭痛、筋肉痛といった軽い症状だけで、数日で自然に回復するタイプもあります。
家庭のお風呂は心配しなくていい?
ニュースを見て、自宅のお風呂まで不安になる方もいらっしゃいますが、一般家庭でレジオネラ感染が問題になることは非常にまれです。
長期間使っていない浴槽や、追い焚き配管の清掃が長く行われていない場合、水を入れっぱなしにしている加湿器などでは注意が必要ですが、日常的な掃除を行い、ぬめりや汚れを放置しなければ、必要以上に心配する必要はありません。
レジオネラ菌を心配してスーパー銭湯や温泉は避けるべき?
結論として、適切に管理されている施設であれば、過度に避ける必要はありません。
レジオネラ感染が報道されるケースの多くは、設備管理や消毒、水質検査が十分に行われていなかった例です。多くの温浴施設では、法律や指針に基づいて定期的な管理が行われています。
在郷軍人病の歴史があるからこそ、現在では予防策や管理方法が確立されているとも言えます。
ワンポイント
最近の日本での発生状況について
日本ではレジオネラ症は毎年一定数報告されており、特に気温が高くなる夏から秋にかけて増える傾向があります。国立感染症研究所の報告では、2024年には国内で約2,400人の患者が報告され、前年よりやや増加しました。ただし、こうした数字の背景には検査体制の整備や報告制度の充実もあり、「急に危険になった」というよりも、見逃されにくくなった側面もあります。実際には、感染源が特定された場合には施設の一時休業や再検査が行われ、行政による管理と是正が進められています。過度に恐れる必要はありませんが、夏場は特に体調変化に注意することが大切です。
気になる症状があれば早めに受診を
温泉やスーパー銭湯を利用したあとに、高熱が続いたり、咳や息苦しさが出てきた場合は、早めに医療機関を受診してください。その際、「最近、温浴施設を利用した」という情報は、診断の重要な手がかりになります。
まとめ
レジオネラ菌は、半世紀前に在郷軍人病として社会問題になった歴史を持つ菌ですが、現在では感染経路や予防方法がよく分かっています。正しく管理された環境や、日常的な清掃を行っている家庭のお風呂で、必要以上に恐れる必要はありません。
ニュースで不安を感じたときこそ、正しい知識を知ることが大切です。気になる症状がある場合は、いつでも浅川クリニックまでご相談ください。
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