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インフルエンザは1シーズンに何回流行する?9月から流行する理由と、ワクチン・マスクの本当の効果

執筆者の写真: 浅川貴介 |  浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士
浅川貴介 | 浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士
21 時間前
読了時間: 10分

「インフルエンザは冬に流行する病気」


昔からそう言われてきました。

ところが最近は、少し様子が違います。


2026年は、なんと東京都で8月のうちにインフルエンザの流行が始まりました。

「まだ夏なのにインフルエンザ?」

「インフルエンザって乾燥すると流行るんじゃなかったの?」

そう思った方も多いのではないでしょうか。


実際、東京都では2026年8月17〜23日の1週間に、インフルエンザの患者数が流行開始の目安を超えました。前年よりも1か月以上早い流行開始です。


今回は、ここ数年のインフルエンザの流行を振り返りながら、なぜ夏や秋にも流行するのか、マスクやワクチンにはどの程度意味があるのか、そして普段の生活で何を気をつければよいのかを考えてみたいと思います。


インフルエンザ 流行 何回

インフルエンザは1シーズンに何回流行するの?


結論からいうと、大きな流行は1回の年が多いものの、2回以上の山ができる年もあります。

昔は、12月ごろから患者が増え始め、1〜2月にピークを迎え、春には落ち着くというのが日本の典型的なパターンでした。


ただし、インフルエンザにはいくつかの種類があります。

  • A型(H1N1):2009年に新型インフルエンザとして流行したタイプ

  • A型(H3N2):香港型と呼ばれるタイプ

  • B型:A型とは別の種類


たとえば、最初にA型が流行して、その後にB型が流行することがあります。

つまり、インフルエンザの流行が一度落ち着いたとしても、それでシーズンが終わったとは限らないのです。


また、同じ人が同じシーズンにA型とB型の両方に感染することもあります。

なお、「インフルエンザが平均何回流行するか」については、全国共通の正式な平均回数が決められているわけではありません。どの程度の患者数の増加を「1回の流行」と数えるかによって、答えが変わってしまうからです。




ここ数年の流行を振り返ってみましょう

シーズン

流行の特徴

2020〜2021年

新型コロナ対策が徹底され、インフルエンザの流行は極めて小規模

2021〜2022年

引き続き大きな流行はみられず

2022〜2023年

インフルエンザの流行が再び目立つように

2023〜2024年

2023年の秋から流行し、冬から春にかけても患者が発生

2024〜2025年

年末に大きな流行。東京都では12月に警報基準を超える

2025〜2026年

2025年秋と2026年冬に大きな流行の山。東京都では警報基準を2度超える

2026〜2027年

2026年8月に東京都で流行開始。今後の動向はまだ不明

東京都感染症情報センターなどの公表資料をもとに整理。2026〜2027年シーズンは2026年10月8日時点。


特に注目したいのは2025〜2026年シーズンです。

東京都では2025年11月13日に警報基準を超え、その後いったん落ち着いたものの、2026年2月5日に再び警報基準を超えました。


一度大きな流行が終わっても、別のウイルスのタイプなどによって再び患者が増えることがあります。

「今年はもう流行したから、あとは安心」とは言い切れないそうです。




2026年はなぜ8月から流行したの?


東京都では2025年は9月下旬、2026年は8月下旬に流行開始の目安を超えています。

では、インフルエンザが夏の暑さに強くなったのでしょうか?


実は、そう単純な話ではありません。

インフルエンザの流行には、気温や湿度だけでなく、人と人が接触する機会、ウイルスの種類、過去の感染やワクチンによる免疫など、いくつもの要因が関係しています。


夏休みや旅行で人が移動し、学校が再開すると人との接触が増えます。

その時期に感染が広がりやすい条件が重なれば、まだ暑くても流行する可能性があるのです。

だからといって、今年の早い流行が学校再開や旅行だけによって起きたと断定できるわけではありません。




インフルエンザと湿度は関係ないの?


湿度は今でも重要です。

ただし、「湿度が高ければインフルエンザには感染しない」という話ではありません。

研究では、空気中に実際に含まれている水蒸気の量を示す「絶対湿度」が低いほど、インフルエンザウイルスが生き残りやすく、感染も広がりやすくなることが示されています。日本のデータを使った研究でも、絶対湿度が低下すると患者数が増える傾向が報告されています。


しかし、湿度はあくまで流行を左右する要因の一つです。


夏や秋: 湿度が高くても、人との接触などによって感染が広がることがある

冬: 空気の乾燥や屋内で過ごす時間の増加など、流行しやすい条件が重なる


つまり、湿度が高い夏にもインフルエンザは流行しますし、乾燥する冬にはさらに流行しやすくなる可能性があります。

家庭では、冬場に室内の湿度を40〜60%程度に保つことは一つの目安になります。ただし、加湿器を使えば感染を防げるというわけではなく、換気や手洗いなども大切です。




コロナ禍では、なぜインフルエンザがほとんど流行しなかったの?


2020〜2022年ごろは、新型コロナウイルスの感染対策として、多くの人がマスクを着用していました。

学校行事が中止になったり、海外旅行が制限されたり、飲み会が減ったりもしました。

その時期、日本ではインフルエンザの患者数が激減しました。

では、これはマスクのおかげだったのでしょうか?


マスクにはインフルエンザの感染を減らす効果があります。

ただし、マスクだけのおかげとは言えません。


当時は、次のような対策が同時に行われていました。

  • マスクの着用

  • 手洗いや手指消毒

  • 換気や人混みの回避

  • 海外からの人の移動の減少

  • 学校行事や大人数での集まりの縮小

  • 発熱した人が外出を控える行動

こうした変化が重なって、インフルエンザが広がりにくくなったと考えられています。


つまり、コロナ禍にインフルエンザが減ったことは、感染対策の大切さを教えてくれました。

一方で、外出や人との交流を長期間制限することには、社会生活への大きな負担もあります。

日常生活で当時と同じことを続ける必要はないでしょう。




結局、マスクはしたほうがいいの?


コロナ禍が終わり、最近は「マスクは自分が風邪をひいたときに、周りの人にうつさないためにつけるもの」という考え方が広まってきたように感じます。


もちろん、それも大切ですが、実はマスクには自分自身を守る効果も期待できます。

2024年に発表されたノルウェーの研究では、マスクをしなかった人の12.2%に風邪などの呼吸器感染症が疑われる症状が出たのに対し、マスクをした人では8.9%でした。

ただし、研究によって結果にはばらつきがあり、マスクだけで感染を完全に防げるわけではありません。


では、普段からずっとマスクをしたほうがいいのでしょうか?

個人的には、そこまでする必要はないと思っています。


ただし、病院やクリニックに行くときは、マスクをすることをおすすめします。

実際、インフルエンザの流行期には、皆さんが思っている以上に多くの発熱患者さんが医療機関を受診しています。

自分自身が感染しないためにも、マスクには意味があると思います。


そして、もう一つお願いがあります。

病院には高齢の方や、持病があって感染症に弱い方もたくさんいらっしゃいます。

インフルエンザは症状が出る前から人にうつすこともあるため、元気なつもりでも、知らないうちに周りの人に感染させてしまう可能性があります。

ですから、浅川クリニックでは、症状のない方にも、できれば院内ではマスクを着けていただけるとうれしいです。


もちろん、事情があって着けられない方もいらっしゃると思います。

自分を守るためにも、周りの患者さんを守るためにも。

病院に来るときは、ちょっとだけマスクを意識していただけたらと思います。




インフルエンザワクチンは本当に大切なの?


これは、ぜひ知っておいていただきたいところです。

インフルエンザワクチンは、接種しても感染することがあります。


「毎年ワクチンを打っているのにインフルエンザになった」

こういう方も珍しくありません。


しかし、ワクチンが無意味ということではありません。


インフルエンザワクチンには、大きく分けて2つの目的があります。

① インフルエンザの発症を減らすこと

② インフルエンザで重症になるリスクを減らすこと


ワクチンの効果は毎年同じではありません。

流行するウイルスの種類や、接種する人の年齢などによって変わります。

たとえば、米国の2025〜2026年シーズンの暫定的な研究結果では、ワクチンによってインフルエンザによる外来受診のリスクが、子どもで約38〜41%、成人で約22〜34%減少したと報告されています。


ここで誤解しないでいただきたいのですが、「効果が30%」というのは、接種した100人のうち30人だけが守られるという意味ではありません。

接種しなかった人と比べて、病気になるリスクが相対的に30%減るという意味です。

また、ワクチンには入院や重症化を減らす効果も期待できます。


特に重要なのは、高齢者、妊娠中の方、糖尿病や心臓病、呼吸器の病気などの持病がある方です。

こうした方にとっては、単に熱が出るかどうかではなく、肺炎などの重い合併症を防ぐことが重要になります。

インフルエンザワクチンは万能ではありませんが、医学的な根拠のある予防手段の一つです。




8月から流行するなら、ワクチンも夏に打ったほうがいいの?


これも最近、考える必要が出てきた問題です。

例年、日本では10〜12月ごろにインフルエンザワクチンを接種する方が多くなっています。


しかし、2026年の東京都では8月に流行が始まりました。

そうすると、「もっと早く接種したほうがよいのでは?」と思うかもしれません。


インフルエンザワクチンの効果は接種後すぐに現れるわけではなく、十分な免疫がつくまで通常2週間程度かかります。

また、接種後の時間の経過とともに予防効果が弱まることもあります。

そのため、8月に流行が始まったからといって、すべての人が夏に接種するのがよいとは限りません。

秋から冬、場合によっては春まで続く流行も考えて、接種時期を決める必要があります。




では、普段の生活では何を気をつければいいの?


インフルエンザを完全に避けながら生活することは現実的ではありません。

仕事にも行きますし、学校にも行きます。旅行や外食も楽しみたいものです。


そこで、浅川クリニックとしては次のような対策をおすすめします。


ワクチンを検討する

特に重症化リスクが高い方には重要です。毎年の流行状況や体調に合わせて接種を考えましょう。


室内の換気をする

人が集まる室内では、窓を開けたり換気設備を使ったりして空気を入れ替えましょう。


必要な場面でマスクを使う

咳があるとき、医療機関を受診するとき、流行中の混雑した場所などでは有効な対策になります。


手洗いをする

帰宅後や食事の前など、基本的な手洗いを続けましょう。


体調が悪いときは無理をしない

発熱や強い咳がある場合は、できるだけ外出を控え、休養を取りましょう。


特に大切なのは、体調が悪いときに周囲へ感染を広げないことです。

インフルエンザは発症する前日から周囲にうつす可能性があり、発症後も数日間は感染力が続きます。

「熱が下がったから、もう人にうつさない」とは限りません。




まとめ

インフルエンザは冬だけの病気ではなくなってきた


最近の流行をみると、インフルエンザは必ずしも冬だけに流行する病気ではないことが分かります。

2026年には東京都で8月から流行が始まりました。

また、2025〜2026年シーズンには、一度流行が落ち着いた後に再び大きな流行が起きています。

だからといって、一年中インフルエンザを恐れて生活する必要はありません。


湿度が高くても流行することはありますし、ワクチンを打っていても感染することはあります。

ただし、それは湿度管理やワクチンが無意味だということではありません。


インフルエンザの感染リスクをゼロにすることはできませんが、ワクチン、換気、手洗い、必要に応じたマスクなどを組み合わせることで、リスクを下げることはできます。


「かからないように気をつける」「人にうつさない」「重症化を防ぐ」

この3つを意識することが、日常生活では何より大切だと思います。


浅川クリニックでは、インフルエンザの検査・診療および予防接種を行っています。発熱や咳などの症状がある方、予防接種をご希望の方は、お気軽にご相談ください。


浅川クリニック 内科・世田谷

〒154-0017 東京都世田谷区世田谷1丁目3−8


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