肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)って何?健診で肺に影が見つかったら

「健康診断で、肺に影があると言われました」
こんな相談から見つかることがあるのが、肺非結核性抗酸菌症です。名前が長いので「肺NTM症」とも呼びます。
浅川クリニックにも、この病気の患者さんが複数名いらっしゃいます。正直に言うと、診る側にとっても難しい病気です。菌が見つかっても、すぐ薬を始めるとは限りません。治療する場合も長い時間がかかります。
だからこそ、「今、肺で何が起きているか」を確かめ、患者さんに合った通院方法を考えることが大切です。

肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)ってそもそも、どんな病気?
非結核性抗酸菌は、土や水など、身近な環境にいる菌です。その菌が肺で増え、病変をつくったものを肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)と呼びます。
原因になる菌はいくつもあります。その中で、MAC(マック)という菌による病気が肺MAC症です。日本で見つかる肺NTM症では、MAC菌が多くを占めます。
どうやって見つかるの?
きっかけとして多いのは、健診の胸部レントゲンで影を指摘されることです。咳や痰が長引いて受診する方もいますが、まったく症状がない方もいます。
影が気になるときは、CTで肺を詳しく見ます。今はクリニックから世田谷区保健センターやメディカルスキャニングにCTを依頼できるので、撮影のためだけに大きな病院を受診する必要はありません。浅川クリニックでも、必要な方はこうした施設で撮影し、結果を一緒に確認しています。
ただし、CTにそれらしい影が写っても、それだけで肺NTM症とは決まりません。痰を採って菌を育てる「培養検査」を行い、ほかの肺の病気ではないかも確認します。原則として、別々に採った痰から2回以上菌が見つかることが診断の目安です。菌が育つまで数週間かかることもあります。
結核とは違うの?昔の「らい病」とは?
どちらとも違います。
結核は結核菌による病気です。一方、肺NTM症の原因菌は、主に土や水などの環境にいます。肺NTM症は、通常、人から人へうつりません。家族と一緒に暮らしたり、普段どおり仕事をしたりできます。
昔「らい病」と呼ばれた病気は、現在のハンセン病です。原因は「らい菌」で、主に皮膚や手足の神経に症状が出ます。肺NTM症とは別の病気です。
どんな人がなりやすいの?
年齢が高い方や、気管支拡張症・COPDなど、もともと肺に病気がある方では見つかりやすくなります。過去に結核にかかった方も、肺に残った変化などが関係して、肺NTM症になりやすいことが報告されています。
一方で、結核をしたことがなく、目立った肺の持病もない方にも起こります。特に肺MAC症は、中高年以降の女性で見つかることもあります。
なぜ最近増えているの?
国内で患者さんが増えているのは確かですが、理由は一つに決められません。
高齢の方が増えたこと、CTや菌の検査で以前より見つけやすくなったことなどが考えられています。環境の変化が関係している可能性もありますが、「これが原因で増えた」とまでは分かっていません。
タバコや受動喫煙はよくない?
肺のためには、禁煙し、受動喫煙も避けることを勧めます。タバコは肺を傷め、COPDなどの原因になります。受動喫煙にも健康への害があります。
ただ、肺NTM症については少し話が複雑です。「タバコを吸うと肺NTM症になりやすい」とは、現在の研究だけでは言い切れません。喫煙者で肺NTM症が少なく見えた研究もあります。これは「タバコを吸ったほうがよい」という意味ではなく、肺NTM症と喫煙の関係がまだ十分に分かっていない、ということです。
治るの?再発するの?
ここが一番気になるところだと思います。
肺NTM症は、見つかった人が全員すぐ薬を飲む病気ではありません。症状がなく、肺の影もあまり変わらない方では、定期的に確認しながら様子を見ることがあります。
治療が必要な場合は、通常、複数の薬を組み合わせて長く続けます。痰から菌が見つからなくなっても、原則としてそこから少なくとも1年間は治療します。薬を終えた後に、再び菌が見つかることもあります。
「薬を飲めば一度で完全に終わり」とは言いにくい病気です。でも、長い間、落ち着いた状態で過ごす方もいます。大事なのは、必要なときに治療を始め、終わった後も経過を確認することです。
アリケイスって何?費用は高いの?
アリケイスは、専用の機械を使って吸入する抗菌薬です。肺MAC症に対して複数の薬を6か月以上使っても、痰から菌が出続ける場合に検討します。肺MAC症と分かったら最初から使う薬ではありません。
研究では、通常の治療にアリケイスを加えた方のほうが、6か月までに痰から菌が見つからなくなる割合が高くなりました。一方、声がかれる、咳が出るなどの副作用があり、耳や腎臓への影響にも注意が必要です。専門医と相談しながら使う薬です。
薬価は2026年9月時点で1日分が約3万8千円。30日使えば、薬剤費だけで約115万円です。驚く金額ですが、保険診療では高額療養費制度が使えます。自己負担の上限は年齢や所得によって違うため、使うことになったら、治療前に病院の相談窓口や加入先の健康保険に確認するのが無難です。
普通はどこで診てもらう病気?
最初の相談は、かかりつけの内科で大丈夫です。健診結果や以前の画像を見て、CTや痰の検査が必要か考えます。そのうえで、治療を始めるか、どの薬を使うかといった難しい判断は、呼吸器内科と相談します。
浅川クリニックにも肺NTM症の患者さんがいらっしゃいます。ご自宅が近く、当院への通院が便利な方は、大きな病院の呼吸器内科と連携しながら、症状や検査結果を一緒に追っています。
「健診で肺に影があると言われたけれど、どうすればいいか分からない」という方は、まず健診結果をお持ちください。そこから必要な検査を考えましょう。
浅川クリニック 内科・世田谷
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