五苓散は自律神経の乱れに効く?頭痛・めまい・気圧との関係を医師が解説
- 浅川貴介 | 浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士

- 6月5日
- 読了時間: 9分
更新日:2 日前
「雨が降る前になると頭が痛い」
「天気が悪い日は、頭痛だけでなくめまいもする」
「自律神経が乱れていると言われたけれど、五苓散は効くの?」
このようなご相談は、外来でも珍しくありません。
五苓散(ごれいさん)は、頭痛やめまい、むくみなどに使われる漢方薬です。
特に、
雨や台風の前になると頭痛がする
気圧が下がると体調が悪くなる
という方に使われることがあります。
ただし最初に大切なことをいうと、
五苓散は「自律神経を直接整える薬」というわけではありません。
自律神経の乱れと呼ばれる症状の中には、頭痛、めまい、吐き気などがあります。
その中でも、気圧の変化や体の水分バランスが関係しているタイプでは、五苓散が合うことがあります。
今回の浅川クリニックのブログでは、五苓散と自律神経、頭痛、めまい、気圧の関係について、解説します。

五苓散とは?
五苓散は、昔から使われている漢方薬です。
5種類の生薬から作られています。
沢瀉(たくしゃ)
猪苓(ちょれい)
茯苓(ぶくりょう)
蒼朮(そうじゅつ)
桂皮(けいひ)
漢方では、体の中の水分がうまく巡っていない状態を「水滞」や「水毒」と呼ぶことがあります。
五苓散は、こうした体の水分バランスを整える目的で使われる漢方薬です。
医療用の五苓散にも、頭痛、めまい、むくみ、吐き気などの症状に対する効能が記載されています。
つまり、
五苓散は単なる頭痛薬ではなく、水分バランスの乱れを伴う症状に使われる漢方薬
と考えるとわかりやすいでしょう。
五苓散は自律神経失調症に効く?
五苓散は、一般的な西洋薬のように
「自律神経そのものを正常に戻す薬」
ではありません。
また、医療用五苓散の効能として「自律神経失調症」がそのまま記載されているわけでもありません。
一方で、自律神経の不調といわれる方には、
頭痛
めまい
吐き気
むくみ
天気による体調変化
などがみられることがあります。
その中でも、気圧変化や水分バランスの変化が関係している症状には、五苓散が選択肢になることがあります。
ですから、
「自律神経失調症だから五苓散」
というより、
「自律神経の不調と呼ばれている症状の中に、五苓散が合うタイプがある」
と考える方が正確です。
天気が悪いと頭痛がするのはなぜ?
雨の日や台風の前に頭痛がする方は少なくありません。
一般に「気象病」や「天気痛」と呼ばれることがあります。
気圧や湿度、気温などが変化すると、体はその変化に対応しなければなりません。
このとき、
自律神経
内耳
血管
痛みを感じる神経
などが関係して、頭痛やめまいが起こると考えられています。
つまり、
「気のせいで頭が痛い」わけではありません。
実際に天候や気圧の変化によって症状が悪化する方はいます。
五苓散は気圧による頭痛に使われることがある
五苓散は、特に天候によって悪化する頭痛でよく使われる漢方薬のひとつです。
実際、日本の臨床研究でも、気象変化に伴う頭痛に対して五苓散を使用し、頭痛の回数や程度、鎮痛薬の使用回数が減少したという報告があります。
ただし、こうした研究の多くは大規模な無作為比較試験ではありません。
そのため、
「天気による頭痛なら五苓散が必ず効く」
ということではありません。
あくまで、
気象変化で悪化する頭痛に対する治療の選択肢のひとつ
と考えるのがよいでしょう。
どんな頭痛に五苓散が合いやすい?
五苓散はすべての頭痛に使う薬ではありません。
例えば、
雨や台風が近づくと頭痛がする
気圧が下がると体調が悪くなる
頭痛と一緒にめまいがある
頭痛と一緒に吐き気がある
むくみやすい
二日酔いで頭が重い
水分を多くとった後に体が重く感じる
といった症状がある場合には、五苓散が検討されることがあります。
逆に、
頭痛がある=とりあえず五苓散
という使い方ではありません。
頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などさまざまな種類があり、治療法も違います。
五苓散とめまい
五苓散は、めまいにも使われることがあります。
特に、
気圧が下がると頭が重くなり、同時にフワフワする
といった方では、頭痛とめまいがセットになっていることがあります。
また、耳の中には平衡感覚をつかさどる「内耳」があります。
内耳では水分バランスが重要です。
そのため、内耳の水分環境の変化が、気圧によるめまいや体調不良に関係している可能性も研究されています。
五苓散はこうした水分バランスに関係する症状に用いられることがあります。

「アクアポリン」ってなに?
ここから少しだけ医学的な話です。
私たちの細胞には、
アクアポリン
という、水を通すトンネルのようなタンパク質があります。
アクアポリンは、
細胞の中と外に水を移動させる通り道
です。
近年の基礎研究では、五苓散がこのアクアポリンを介した水分移動に影響する可能性が報告されています。
そのため、
五苓散が体内の水分バランスを調節する仕組みのひとつではないか
と考えられています。
ただし、この研究の多くは基礎研究です。
「五苓散を飲むと脳のむくみが取れて頭痛が治る」と単純に説明できるほど、まだ仕組みが完全に解明されているわけではありません。
五苓散は利尿剤なの?
五苓散というと、
「おしっこを出す薬ですか?」
と聞かれることがあります。
少し違います。
一般的な利尿剤は、腎臓から塩分や水分を排泄させて尿量を増やす薬です。
五苓散は、西洋医学の利尿剤と同じ仕組みで働く薬ではありません。
むしろ、
体の中で偏っている水分のバランスを調整する
という考え方で使われます。
ですから、
「むくんでいるからどんどん尿を出す」
という単純な薬ではありません。
五苓散はどのくらい飲めばいい?
五苓散の飲み方は、症状や年齢、体格などによって異なります。
医療用のツムラ五苓散の場合、成人では通常1日7.5gを2〜3回に分け、食前または食間に服用することが基本となっています。
ただし、
頭痛が出そうなときだけ使う方
一定期間続けて使う方
など、実際の使い方は症状によって異なります。
自己判断で長期間飲み続けるより、症状が続く場合は医師に相談することをおすすめします。
五苓散に副作用はない?
「漢方だから副作用はない」
と思われることがあります。
これは間違いです。
漢方薬にも副作用があります。
五苓散では、
発疹
発赤
かゆみ
胃の不快感
食欲低下
などが起こることがあります。
体調がおかしいと感じた場合は、無理に飲み続けず、医師や薬剤師に相談してください。
また、漢方薬を複数飲んでいる場合には、似た生薬が重複していることがあります。
処方薬だけでなく、市販の漢方薬や健康食品も含めて医師に伝えておくことが大切です。
頭痛なら何でも五苓散で様子を見ていい?
これはおすすめできません。
頭痛の中には、すぐに検査が必要な病気もあります。
例えば、
今まで経験したことがない激しい頭痛
突然起こった激しい頭痛
手足の麻痺
ろれつが回らない
意識がおかしい
発熱と強い頭痛
頭をぶつけた後の頭痛
日ごとに悪化している頭痛
などがある場合は、漢方薬で様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診してください。
脳出血やくも膜下出血、髄膜炎などを除外する必要があることがあります。
Q&A 五苓散についてよくある質問
Q. 五苓散を飲めば自律神経が整いますか?
五苓散が自律神経そのものを直接整える、とまではいえません。
ただし、自律神経の不調といわれている症状の中でも、気圧変化に伴う頭痛やめまいなどでは効果が期待できることがあります。
Q. 五苓散は自律神経失調症の薬ですか?
自律神経失調症そのものが、医療用五苓散の効能として記載されているわけではありません。
症状を確認したうえで、五苓散が合うタイプかどうかを判断します。
Q. 天気が悪くなる前に飲んでもいいですか?
気象変化で毎回頭痛が起こる方では、症状が出る前から使用されることもあります。
ただし、飲み方は症状によって異なるため、医師に相談してください。
Q. ロキソニンと一緒に飲めますか?
状況によって併用することはあります。
ただし、頭痛薬を頻繁に使用している方では、薬の使いすぎによる頭痛が起こっていることもあります。
毎月何度も鎮痛薬を必要とする場合は、一度頭痛そのものを評価した方がよいでしょう。
Q. 五苓散は毎日飲んでも大丈夫ですか?
必要に応じて継続して使用することはあります。
ただし、漫然と長期間使用するのではなく、本当に効いているのか、症状が変わっていないかを定期的
に確認することが大切です。
ワンポイントアドバイス
「天気が悪いと頭痛がするから、自律神経が悪い」
と考える方は多いです。
確かに自律神経は関係しています。
しかし実際には、
気圧、内耳、血管、神経、水分バランスなどが複雑に関係しています。
そのため、
自律神経を整えれば全部治る
というほど単純ではありません。
五苓散も同じです。
誰にでも効く万能な漢方薬ではありませんが、
「雨の前になると毎回頭が痛くなる」
「頭痛とめまいがセットで起こる」
といった特徴がある方では、治療の選択肢になることがあります。
まとめ
五苓散は、体の水分バランスを整える目的で使われる漢方薬です。
頭痛やめまいにも使われ、特に気圧や天候の変化に伴って症状が悪化する方では、効果が期待できることがあります。
一方で、
五苓散は自律神経を直接治す薬ではありません。
自律神経の不調と呼ばれている症状の中から、五苓散が合いそうなタイプを見極めることが大切です。
また、頭痛にはさまざまな原因があります。
「天気のせいだから」
「自律神経だから」
と決めつけず、いつもと違う頭痛や強い症状がある場合には、一度医療機関で相談しましょう。
浅川クリニック世田谷では、西洋医学と漢方を組み合わせながら、症状に合わせた治療を行っています。
頭痛、めまい、気圧による体調不良などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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