腎機能(クレアチニン値)はなぜ季節で変動するのか
- 浅川貴介 | 浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士

- 18 分前
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腎機能を見るとき、一般的に用いられる指標が クレアチニン(Cr値) と eGFR です。しかし、これらは腎臓そのものの状態だけでなく、季節・水分量・体調の影響を受けやすい指標 であることが知られています。
同じ人でも、夏と冬で数値が異なることは珍しくありません。その背景には、いくつかの生理学的理由があります。

◆ 1. 季節による腎機能の生理学的変化
● 夏:脱水による見かけ上のクレアチニン上昇
暑い時期は汗の量が増え、体内の水分が減りやすくなります。血液中の水分が減ることで、Cr値が“濃縮”され、実際より腎機能が悪く見えることがあります。
● 冬:血圧上昇による腎血流の変化
寒い環境では血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。これにより腎臓の血流が一時的に変化し、eGFRが変動することがあります。
◆ 2. 季節以外の「よくある一時的な腎機能低下」
腎臓に病気がなくても、以下のような日常的な体調変化で腎機能は悪化したように見えます。
● アルコールの飲み過ぎ
飲酒には利尿作用があり、脱水の原因になります。嘔吐や下痢を伴うとさらに脱水が進み、Cr値が上昇することがあります。
● 熱中症
強い脱水と体温上昇は腎臓に大きな負担をかけ、急性腎障害(AKI)のきっかけになることもあります。
● 風邪や感染症
発熱時は自然と水分が失われ、また食欲低下で摂取量も減るため、腎機能が悪化したように見えます。炎症そのものが腎臓に影響を及ぼすこともあります。
◆ 3. クレアチニンだけでは判断が難しい理由
Cr値は腎機能の指標である一方、以下のような要素にも大きく影響されます。
筋肉量
年齢・性別
水分バランス
食事(特に肉類)
急性の体調変化
そのため、「Crが少し上がった=腎臓が悪くなった」とは限りません。
◆ 4. “本当の腎機能”を知りたいときに役立つ指標
シスタチンC
クレアチニンの弱点を補う検査として、シスタチンC(CysC) が注目されています。
シスタチンCの特徴
筋肉量の影響を受けにくい
脱水や飲酒の影響を受けにくい
Crより早期の腎機能低下を反映しやすい
そのため、「Crは上がったが、腎機能が本当に悪化したのか確かめたい」という場面で有用です。
CrとCysCの両方を使った 複合eGFR(eGFRcr-cys)は、より正確に腎機能を推定できるとされています。
◆ 5. 血液検査だけではわからない情報
腹部超音波(エコー)
腎臓の評価では、数値だけでなく「形」や「構造」をみることも重要です。
エコーでわかること
腎臓の大きさ(萎縮の有無)
皮質の厚み
尿路の閉塞(例:水腎症)
結石の有無
嚢胞・腫瘍などの構造的異常
左右の比較
血液検査でCrが上昇していても、原因が脱水なのか構造の問題なのかを区別する上で、超音波は非常に役立ちます。
◆ 6. 腎機能評価は“多角的”であるべき
腎機能を正確に理解するには、次のような複数の視点を組み合わせることが重要です。
血液検査(Cr・eGFR・シスタチンC)
尿検査(蛋白・潜血・尿比重など)
画像検査(超音波で構造評価)
季節・水分・体調など背景因子の確認
「数値だけを見て判断しない」ことが、腎機能評価では極めて大切です。
ワンポイントアドバイス
腎機能の“変動”が、必ずしも一時的とは限りません。
季節性の脱水、飲酒、発熱などによって起きた 一過性の腎機能悪化(急性腎障害:AKI) は、多くの場合は水分補正や体調回復とともに元に戻ります。
しかし近年の研究では、一度起きた急性腎障害が完全には回復せず、そのまま腎機能の低下として“固定化”するケースが一定の割合で存在することが明らかになっています。
特に
高齢の方
高血圧・糖尿病などの基礎疾患がある方
繰り返し脱水を起こす方
感染症や薬剤の影響を受けやすい方
では、軽度の変動と思われるものが、後になって 慢性的な腎機能低下につながっていた ということもあります。
したがって、一時的な変動であっても「念のため数週間〜数ヶ月後に再チェックする」ことが、腎臓を守るうえで重要です。
まとめ
腎機能(特にCr値・eGFR)は、
季節(夏の脱水、冬の血流変化)
アルコール
熱中症
風邪・発熱などの日常的な体調変化でも変動します。
そのため、腎臓の状態を正しく理解するには、血液検査・尿検査・画像検査を組み合わせ、多角的に評価することが重要です。
ひとつの数値にとらわれず、背景や体調を踏まえて腎機能を長期的に見ていくことが、トラブルの早期発見につながります。
浅川クリニック世田谷では、腎臓専門医として総合的な評価を行っています。
腎機能の変動が気になる方は、お気軽にご相談ください。
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