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健康診断の前日だけ節制しても意味はある?血糖値・中性脂肪・体重への影響を医師が解説

執筆者の写真: 浅川貴介 |  浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士
浅川貴介 | 浅川クリニック副院長 | 総合内科専門医・腎臓専門医・医学博士
6 日前
読了時間: 9分

健康診断が近づくと、

「前日だけでもお酒をやめよう」「夕食を軽くすれば、検査結果が良くなるかもしれない」「少しでも体重を減らしておきたい」

と考える方は多いのではないでしょうか。


結論からいうと、健康診断の前日に節制する意味はあります。


特に、次の項目は直前の食事や飲酒、水分量などで変化しやすい検査です。

  • 中性脂肪

  • 血糖値

  • 尿酸値

  • 体重

  • 血圧

  • 腎機能の一部

  • 貧血検査の一部


一方、HbA1cや慢性的な肝機能異常などは、前日だけ頑張っても大きく変わりません。

健康診断は試験ではありません。良い点数を取ることより、普段の体の状態を正しく調べることが目的です。


今回の浅川クリニックのブログでは、健康診断の前日に節制すると、どの検査値が変わりやすいのかをわかりやすく解説します。


健康診断 前日 節制

健康診断前日の節制で変わりやすいのは中性脂肪


健康診断の検査項目のなかで、食事や飲酒の影響を特に受けやすいのが中性脂肪です。


前日の夜に、

  • 焼き肉をたくさん食べる

  • 揚げ物を食べる

  • ラーメンやチャーハンを食べる

  • お酒を多く飲む

  • 深夜に食事をする

といったことがあると、翌朝の中性脂肪が高くなる可能性があります。


反対に、前日の夕食を軽めにして、お酒や夜食を控え、指定された絶食時間を守れば、中性脂肪は普段より低く出ることがあります。


空腹時中性脂肪を測定する場合、一般的には10時間以上、水以外の飲食物を摂取していない状態で採血します。

つまり、中性脂肪は「前日の頑張りが比較的反映されやすい検査」です。

ただし、数値が一時的に下がっても、中性脂肪がたまりやすい体質や生活習慣そのものが改善したわけではありません。




血糖値も直前の食事で変わる


血糖値も、直前の食事内容や食後の経過時間によって変化します。


特に、

  • ご飯や麺類を大量に食べる

  • ケーキやお菓子を食べる

  • 甘い飲み物を飲む

  • 夜食を食べる

  • 深夜までお酒を飲む

といった行動は、翌朝の血糖値に影響する可能性があります。


午前中に健康診断を受ける場合は、空腹時血糖や中性脂肪への影響を避けるため、一般的に健診前10時間以上は水以外の飲食物を摂取しないよう指示されます。


ただし、空腹時血糖が一度正常だったからといって、糖尿病ではないと言い切れるわけではありません。

空腹時血糖は、その日の状態を切り取った「写真」のような検査です。




HbA1cは前日だけ頑張ってもほとんど変わらない


血糖値とは違い、前日だけ節制してもほとんど変わらないのがHbA1cです。

HbA1cは、過去1~2か月程度の血糖状態を反映します。


そのため、健康診断の前日に、

  • 夕食を抜く

  • 甘いものをやめる

  • 炭水化物を減らす

  • 急に運動する

といったことをしても、HbA1cが急に下がることはありません。


HbA1cは「最近の生活習慣をまとめた成績表」のようなものです。前日だけではごまかしにくいため、糖尿病や糖尿病予備群の発見に役立ちます。




前日だけ食事を減らすと体重も軽くなる


健康診断の前日から食事量を減らすと、翌朝の体重が少し軽くなることがあります。

ただし、短期間で体脂肪が大きく減ったわけではありません。


主に減っているのは、

  • 胃や腸の中に残っている食べ物

  • 体内の水分

  • 糖質と一緒に蓄えられている水分

です。


体重は、食事、排便、発汗、尿などによって、1日のなかでも変動します。

前日の夕食を軽くして翌朝まで食べなければ、数百グラムから、場合によっては1kg前後軽くなることもあります。しかし、その多くは水分や胃腸の内容物による変化です。


健康診断が終わって食事や水分をとれば、体重は元に戻ります。

つまり、体重計の数字が減っていても、前日だけで本当にやせたわけではありません。




体重計の上でお腹をへこませる意味はある?


体重計の上でお腹をへこませても、基本的に体重は変わりません。

お腹をへこませても、脂肪や内臓が体の外へ出ていくわけではないからです。体の中で形や位置が少し変わるだけで、体全体の重さは同じです。

息を大きく吐けば、肺から出た空気の重さの分だけ、ごくわずかに軽くなる可能性はあります。しかし、一般的な体重計ではほとんど分からない程度です。


体重の数字だけを考えれば、

  • 上着を脱ぐ

  • ポケットの中身を出す

  • 排尿してから測る

ほうが影響は大きくなります。


ただし、健康状態の変化を比較するためには、毎年なるべく同じ条件で測ることが重要です。




腹囲測定ではお腹をへこませると細くなる?


腹囲については、お腹を強くへこませると一時的に小さく測定される可能性があります。


しかし、正しい腹囲測定は、

  • 立った状態で

  • おへその高さを測り

  • 両腕を自然に下ろし

  • 普通に息を吐き終えたところで測る

のが基本です。


息を止めたり、お腹を強くへこませたりして測るものではありません。

腹囲を一時的に細く測定できても、内臓脂肪が減ったわけではありません。正しい評価ができなくなるため、普段どおりの状態で測ってもらいましょう。




前日だけ禁酒するとγ-GTPは下がる?


健康診断の前日だけお酒を控えることで、γ-GTPがわずかに良く出る可能性はあります。

ただし、γ-GTPは前日の飲酒だけで急激に変化する検査ではありません。


日頃からの飲酒によってγ-GTPが上昇している場合、1日禁酒しただけで正常値になるとは限りません。一般的には、禁酒を続けることで数日から数週間かけて下がっていきます。


前日の禁酒による影響が出やすいのは、γ-GTPよりもむしろ、

  • 中性脂肪

  • 血糖値

  • 尿酸値

  • 血圧

  • 脱水に関連する検査値

です。


前日の禁酒には意味がありますが、γ-GTPをごまかせるほどの効果は期待しないほうがよいでしょう。




前日に飲みすぎると脱水になりやすい


アルコールには尿量を増やす作用があるため、前日に大量に飲むと、翌朝に脱水状態になることがあります。


特に、

  • 飲酒量が多い

  • 水をあまり飲んでいない

  • 嘔吐や下痢がある

  • 汗を多くかいた

  • サウナに入った

  • 寝不足になった

といった場合は、脱水の影響が強くなる可能性があります。


前日の大量飲酒は、肝機能だけではなく、貧血や腎機能の検査にも影響することがあります。




脱水になると貧血がないように見えることがある


脱水になると血液中の水分が減り、血液が濃くなります。これを血液濃縮といいます。


血液が濃縮されると、

  • 赤血球数

  • ヘモグロビン

  • ヘマトクリット

  • アルブミン

  • 総蛋白

などが普段より高く測定されることがあります。


本当は軽い貧血があっても、脱水によってヘモグロビン値が押し上げられ、正常範囲に入る可能性があります。

ただし、通常の絶食で必ず貧血が隠れるわけではありません。大量飲酒、発汗、水分制限などによって脱水が強いほど、影響が出やすくなります。


反対に、水を極端に大量に飲めば血液が薄まり、ヘモグロビンが低めに出る可能性もあります。

水を抜くのでも、大量に飲むのでもなく、適度に摂取することが大切です。




脱水になると腎機能が悪く見えることもある


脱水になると、腎臓へ流れる血液が少なくなります。


その結果、

  • クレアチニンが高くなる

  • eGFRが低くなる

  • BUNが高くなる

  • 尿酸値が高くなる

  • 尿が濃くなる

といった変化が起こる可能性があります。


つまり、普段より腎機能が悪く見えることがあるのです。


特に注意が必要なのは、

  • 高齢者

  • もともと腎機能が低下している人

  • 利尿薬を服用している人

  • 前日に大量飲酒した人

  • 発熱、下痢、嘔吐がある人

  • 暑い日に汗を多くかいた人

です。


さらに、前日に肉を大量に食べたり、激しい筋力トレーニングをしたりすると、クレアチニンが一時的に高くなる場合があります。

腎機能を正しく評価するためにも、前日は暴飲暴食や激しい運動を避け、水分を極端に制限しないことが重要です。




激しい運動も前日は避けたほうがよい


「検査結果を良くするために、前日にたくさん運動しよう」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、健康診断の直前に激しい運動をするのはおすすめできません。


激しい運動によって筋肉が傷つくと、

  • AST

  • CK

  • クレアチニン

  • 尿蛋白

  • 尿潜血

などが一時的に上昇することがあります。


本当は病気ではないのに、肝機能異常や腎機能異常を疑われる可能性もあります。

前日は通常の散歩や軽い運動程度にして、筋力トレーニング、長距離ランニング、激しいスポーツは避けましょう。




薬を勝手に中止してはいけない


健康診断を受けるからといって、処方薬を自己判断で中止してはいけません。

特に降圧薬などを中止すると、血圧が大きく上昇する可能性があります。


一方、糖尿病治療薬やインスリンは、絶食中に普段どおり使用すると低血糖を起こすことがあります。

薬の飲み方が分からない場合は、自己判断せず、健診施設や処方した医療機関へ事前に確認してください。




健康診断の前日はどう過ごせばよい?


健康診断の前日は、極端な節制ではなく、検査結果を不自然にゆがめないことが大切です。


  • 夕食は普段どおりか、やや軽めにする

  • 脂っこい料理や大量の炭水化物を避ける

  • 夜食を控える

  • お酒を飲まない

  • 激しい運動やサウナを避ける

  • 夜更かしをしない

  • 指定された絶食時間を守る

  • 水分を極端に制限しない

  • 薬を自己判断で中止しない


胃カメラや腹部超音波検査などを受ける場合は、水分摂取について個別の指示が出ることがあります。必ず健診施設からの案内を優先してください。




健康診断は「良い点数を取る試験」ではない


前日の節制によって、中性脂肪、血糖値、体重などが多少良くなることはあります。


しかし、水まで抜いてしまうと、

  • 貧血が隠れる

  • 腎機能が悪く見える

  • 尿酸値が高くなる

  • 尿検査が濃くなる

  • 採血しにくくなる

など、別の検査結果をゆがめる可能性があります。


健康診断の前日は、「数値を良くする日」ではなく、「検査の邪魔になる行動を避ける日」と考えましょう。




まとめ


健康診断の前日に節制する意味はあります。

特に中性脂肪と当日の血糖値は、前日の食事、飲酒、絶食時間によって変化しやすい項目です。食事量や水分量が減れば、胃腸の内容物や水分が減り、体重も少し軽くなります。


一方で、体重計の上でお腹をへこませても体重は変わりません。腹囲は細く測定される可能性がありますが、内臓脂肪が減ったわけではありません。

また、前日の禁酒でγ-GTPがわずかに良くなる可能性はありますが、1日だけで大きく改善する検査ではありません。むしろ大量飲酒による脱水で、貧血が隠れたり、腎機能が悪く見えたりする可能性があります。


健診前日の合言葉は、

「酒は抜く。でも、水まで抜かない」

です。


暴飲暴食、飲酒、夜更かし、激しい運動を避け、指定された絶食時間を守って受診しましょう。


浅川クリニック 内科・世田谷

〒154-0017 東京都世田谷区世田谷1丁目3−8


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